Sayer Says in Japanese

Sunday, November 29, 2009

人生は笑いとばすもの

科学紀元9年11月30日(月)午前1時すぎ

今年末に刊行予定の『自然淘汰論から中立進化論へ〜進化学のパラダイム転換〜』(NTT出版)の本文の最終行は、「人生は笑いとばすものだと。」という一文で終わっている。なぜこう締めくくったのかは、この本を読んでみてほしいが、この言葉は、2006年に出身高校(福井県立藤島高校)のPTA通信から頼まれて書いた以下の文章(45号、15-16頁)を念頭に置いたものなのです。まあ、こんな文章を堂々と掲載してくれたPTAの方々には、頭が下がります。もっとも、僕は大まじめで、僕のような高校生がきっと今でもいるだろうから、そんな高校生に読んでほしくて書いたのです。ちなみに、今年末に出るこの本の表紙カバーには、僕が父親との親子展のために描いた作品「アルデバラン」が使われているのです。ふふふ。
 なお、以下の文章は僕の家族にもしっかり読んでもらいましたが、三人(妻と子供ふたり)とも、「ふふん」という感じで、鼻で笑っていました。恐るべし、我が家?!

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  人生は笑いとばすもの
    斎藤成也(国立遺伝学研究所)
 中学の卒業アルバムを作った時のことだ。一人一人が自由にポーズをとっていい個人別コーナーがあった。僕は当時すでに素朴なニヒリズムに傾倒していたので、精一杯うつろな顔をして撮られた。今見ても、あのときの写真は気に入っている。
 こんなネクラ(奥底は暗いのに表面的には明るく振る舞っている人間)なやつが、よくも今までのんびりと生きてきたもんだなあと思う。中学時代以来、高校3年間はもとより、ずっと今日まで虚無主義者である。
 この種の人間にとってみれば、人生などなんの価値もない。そうわかってはいるもの、とりあえず楽しんでゆこうということになる。知的世界をもっと冒険してみたいという素直な好奇心は、幼少時代から続いていた。大学、大学院、留学を経て、現在研究を続けているのもその延長であり、まあ惰性のようなものだ。
 高校時代は思春期まっただなかで、それなりの恋心もあった。でも子供のころからSF好きだった僕は、地球上には自分にふさわしい異性は本当にはいないんだ、異星のどこか、たとえばアルデバラン星系の惑星に住む、巨大なムカデの女王が僕にふさわしいんじゃないかな、と思ったりしていたのである。
 高校生のある日、母親から般若心経の解説本を読めと渡された。福井は仏教王国であり、親世代には浄土三部経を暗記している人が多かった。そういう分野の知識のまったくない僕を見て、簡単なものを見せたつもりらしい。般若心経はおもしろかった。な〜んだ、仏教ってニヒリズムじゃないか、とわかったからだ。ところが、高校の図書館から別の本を借りてきてもっと仏教について学ぼうとしたら、今度は両親から止められた。宗教に走るのをおそれたのだろう。結局僕はおとなしく従ったが、それも大学入学までだった。
 幼少の時から活字好きなので、大学に入ったら好きな本をどんどん読んだ。仏教は虚無主義者の僕に合っていて、維摩経や大涅槃経がおもしろかったし、ミリンダ王の問いもよかった。お釈迦さんの肉声に近いと言われているスッタニパータは特に気に入った。そんなこんなで、大学を卒業したら出家してみたいなあとぼんやり思っていた。ましてや結婚するなど考えてもいなかった。
 結局、例によって惰性で、というか僕の中にひそむ別の指向性が研究を選んでしまい、日本という国があまり好きではない(今でもそうである)こともありさっさと米国に留学した。留学しようと思ったところでひよってしまい、外国でひとりだとさみしいなと考え、結婚してしまった。あとは野となれ山となれで、帰国後には子供もできてしまった。留学先ではがちがちのキリスト教徒である日曜学校の先生に出会い、新約聖書を中心に、キリストというすばらしい人間の事績を学ぶことができた。奇跡を重視する考えにはついてゆけなかったけれど。
 学生時代以来ずっと、人間を中心とする生物の進化を研究している。進化は歴史であり、人間の歴史を知ることが個人的に好きだったこともあるだろうが、進化は大多数の宗教が否定する概念であることも、ニヒリストの僕に合っていたのかもしれない。生命だけでなく宇宙全体も、百数十億年という悠久の時の流れの中で進化している。ということで、宇宙全体に比べれば塵芥のような存在である自分だから、その人生なんて、笑いとばせばいいと思っているのです。
                       (1975年卒業、科学者)
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久しぶりに手にしたモノーの『偶然と必然』

科学紀元11月30日(月)午前0時40分頃

現在書いているある本で言及するために(実は、12月28日刊行予定の『自然淘汰論から中立進化論へ〜進化学のパラダイム転換〜』でも言及していますが・・・)、『偶然と必然』を久しぶりに手にとりました。
 この本を手に取ると、実は、大昔若い時に勉強した『英語の構文150』の最初のほうに登場する名文: The girl's name reminds me of my bitter but sweet youth."を思い出すのです。この本に感激した僕が、ある女の子にうっかり「おもしろいから是非読んでね」と貸したばかりに、その後会うことを拒否されてしまった苦い思い出があるのです。この英語を勉強したときには、「ふうん、そんな素敵な思い出を、自分も作れるのかなあ」と思っていましたが、まあ、作ることができて幸せです。というわけで、 "The book title reminds me of my bitter but sweet days."とひねってみました。"youth"とすると若い時のことにしか使えないので、"days"として、一般化してみました。強いて訳せば「この本の題名を聞くと、あの頃のほろ苦さを思い出す」でしょうか。
 〜どうも、のだめを読んでいたら出てきたワインを見てワインを飲みたくなったのに、なかったので、仕方なくアイリーモルトのCaol Ilaを飲んでいるので、筆がついついすべっている・・・〜

SoothSayer

のだめカンタービレ 祝完結!

科学紀元9年11月30日(月)午前0時半ごろ

昨日、久しぶりに近所の書店でコミックチェックをしたら、なんとのだめ23巻を発見。うきうきして帰宅して読だしました。最初から笑いと微笑みの連続でした。ところが、最後の話が、なんと Last Lesson。え、これで最終回!?と思いつつ、なるほど、のだめと真一にほのぼのとした感じがあっていいなあという気分が全巻を満たしているではありませんか。さきほど、もう一度読み直して、さきほどはすっとばして読まなかったアシスタントさんの感想ページもじっくりと読みました。
8年間、ありがとうございました。実写版の上野樹里さんもすばらしかった。欧州編の完結編を楽しみにしています。
それにしても、恐るべし、サン・マロ。最近調べ物をしていたら、ある有名なフランスの研究者がサンマロ出身だった。おっと、最終シーンをほのめかしてしまって、すみません!

とにかく、来年新春の「みすず」でいつも僕が紹介するコミック作品は、「のだめ」で決定!

Sayer

Saturday, November 28, 2009

新幹線の切符を買う自動販売機について

科学紀元9年11月29日(日)

この社会で疑問に思うことの第二弾である。これも小さいことではあるが、前回の成田空港の問題とは異なり、自分自身が毎回不都合に感じており、改善してほしいなと思っていることである。
 JR新幹線のいろいろな駅で切符を買う時に、自動販売機を使うことがある。これがやたらと手間がかかるのである。最初はまだよい。10種類くらいの選択枝が出ていて、そのなかの一つを選ぶのである。ところが次からは、こちらかみると、「あたりまえだろう」という選択枝が現れるのだ。あと数分で発車する新幹線の切符を買いたいのに、乗る列車は「本日」のものかどうかを聞いてきたり、こちらは一人なのに、「ひとり」かどうかを聞いてきたり。
 先日九州の久留米駅でも、同じような選択肢を出してきた自動販売機があったので、おそらくJR各社で共通のシステムを導入しているのだろう。このような一律的な運用は、システムの運用者であるJRにとっては便利なのかもしれないが、利用者にとってはとても迷惑である。
 基本的に、自動販売機システムの設計思想が間違っている。お客さんにはどのようなタイプが多いのか、まず統計をとって、それにしたがって選択肢を考えるべきなのだ。おそらく、私のように単独で乗る人が一番多いのではなかろうか。統計データを持っていないので、仮に自分の買い方がもっとも一般的だとして、以下によりよい、簡素化された選択枝を提案したい。

最初の画面:一連の選択枝の組み合わせを連続して表示する。
たとえば、JR新幹線の三島駅の場合であれば、次のような感じだ。

(1)本日;お一人;三島駅==>品川駅または東京駅;自由席/指定席;普通車/グリーン車
(2)本日;お一人;三島駅==>新横浜駅;自由席/指定席;普通車/グリーン車
(3)本日;お一人;三島駅==>静岡駅;自由席/指定席;普通車/グリーン車
(4)本日;複数;三島駅から乗車;自由席/指定席;普通車/グリーン車
(5)新幹線回数券のご購入
(6)明日以降;お一人;三島駅から乗車;自由席/指定席;普通車/グリーン車
(7)その他

自由席/指定席、普通車/グリーン車は、前者(自由席で普通車)が選択されており、それぞれの部分をクリックすると別のものに変わり、同時にその番号を選択したことになって、次のページに変わる。

もし、本日、一人だけで三島駅から東京駅に、普通車の自由席に乗りたければ、(1)の番号をタッチスクリーンで押すとただちに確認&支払い画面が出てきて、現金かカードかを選択し、支払っておしまいである。現在のシステムでは、確認ボタンを押して、さらに支払い画面が出てくるが、現金かカードを選択するボタンを押すということは、火確認したことになるのだから、両者は同じ画面にまとめるべきである。

普通車の指定席に乗りたければ、(1)の自由席/指定席ボタンを押せばすぐに本日、一人、三島駅==>品川駅または東京駅の指定席選択画面が出てくる。そこでも、時間帯指定をすることなく、現在最初に乗ることが可能な列車を表示する。(1)ボタンを押したあとでも、確認&支払い画面のところで、自由席を指定席に変更することが可能なので、そこを押せば指定席選択画面がでてくる。

このようにすれば、典型的な利用者にとっては、ボタンを押す回数が激減するはずである。もちろん、明日の指定席で、三島駅以外の駅から乗って、などのやや複雑な選択枝を選ぶ必要のある利用者にとっては、ボタンを押す回数はあまり減らないだろうが、全体の利用者がボタンを押す回数はぐっと減るだろう。

斎藤成也

帰国して成田空港で見る最初のメッセージについて

科学紀元9年11月29日(日)

世間では事業仕分けに関して議論が沸騰している。それとは全然違うが、以前から感じていた社会の問題点や矛盾を、細かいことではあるが、少しずつ指摘してゆきたい。

 初めは、成田空港の表示だ。十数年前、外国人のある研究者が2週間ほど私の研究室に滞在したことがある。彼にとってははじめての日本だったが、成田空港で最初に目にしたメッセージ(彼は日本語が読めなかったので、英語での表示)は、「規則に従いなさい」というものだったと、私にあきれて告げたことを、はっきりと覚えている。
 現在ではさすがにそのような官僚的発想は消えているが、それでも私は疑問である。英語や中国語、韓国語で「日本へようこそ」というメッセージがあるのはよい。しかし日本語でのメッセージはどうだろう。「おかえりなさい」である。これはこの十年くらい、変わっていない。成田空港の責任者はなにを考えているのだろうか? 日本語を解する人はみんな日本人だと勘違いしているのではなかろうか?それは自虐的といえるだろう。日本語を理解する日本人以外の人の割合は、たしかに低いだろう。しかしわざわざ日本に来る外国人には、日本語を理解している人の割合は、あきらかに高いはずだ。実際に、私の共同研究者であるフランスのBlancher教授は、平仮名をほとんどすべて読むことができ、簡単な漢字もよめる。このような人達が成田空港に到着し、日本語で「おかえりなさい」とだけ書いてあるのをみたら、がっかりするだろう。
 外国の空港ではどうだろうか。米国ではどこの空港でも、"Welcome to the U.S.A"とあるし、中国でも「熱烈歓迎」とある。それぞれ、自国の言語で書いてあるではないか。もっとも、欧州の空港についてはあまりそのような表現を見たことがないので、結局文化の差なのかもしれない。しかし、英語でも中国語でも韓国語でも「ようこそ日本へ」と書いてあったら、日本語でもローマ字で"Yokoso"などと書かず、「ようこそ」と素直に標記すべきだろう。

斎藤成也

Tuesday, November 17, 2009

『生物学者と仏教学者 七つの対論』刊行!


高校以来の畏友、佐々木閑さんとの共著、『生物学者と仏教学者 七つの対論』が、ウェッジ選書の1冊として刊行されます。今週の11月20日が刊行日です。表紙の絵は、長女齋藤のはら(別名宝輝)の作品シリーズ「色即」のひとつを使わせてもらいました。定価1470円で、360頁という分厚さです。

第一の対論 物質と精神
第二の対論 意識と無意識
第三の対論 生と死
第四の対論 科学と宗教における絶対的存在
第五の対論 科学と宗教の重なる部分
第六の対論 科学と宗教の将来
第七の対論 対談

第一の対論から第六の対論までは、それぞれのテーマのもとに、独立に論を進めました。最後の第七の対論で、実際に対談しました。全体で3時間ほどの内容をまとめたものです。

斎藤成也 

Thursday, November 05, 2009

静岡県掛川の嬬恋リゾートにて

科学紀元9年11月6日(金)

これで今朝は3件目のポストです。さきほど朝食を終えて、部屋にもどってきました。
昨日と今日、ここ静岡県掛川の嬬恋リゾートにて、私が兼任している総合研究大学院大学生命科学研究科3専攻と先導科学研究科1専攻の合同セミナーが開催されています。
 私は昨日、"All biology aspire to evolution"と題した講演を行いました。5年前にこのセミナーで講演したときには日本語でしたが、なるべく英語を使おうという動きがこの数年強くなり、昨日は英語でしました。今日は私の研究室の二人の大学院生が、やはり英語で20分弱の講演を行います。またポスター発表も、英語です。

斎藤成也

現代進化学のパラダイム転換を中心とする本を出版します

科学紀元9年11月6日(金)

ようやく書名が決定したという連絡を受けましたので、ご紹介します。
現在第2校の段階です。

斎藤成也著
『自然淘汰論から中立進化論へ〜進化学のパラダイム転換〜』
NTT出版、今年末に刊行予定

第1章 歴誌学としての自然科学
第2章 ラマルク進化論出現にいたるまでの進化思想
第3章 ダーウィンの進化学研究
第4章 集団遺伝学理論の確立と進化の新総合説の台頭
第5章 進化学への分子生物学革命の影響
第6章 中立進化論を提唱した2論文
第7章 自然淘汰進化論から中立進化論へのパラダイム転換
第8章 21世紀における中立進化論
第9章 現代進化学の思想的意義
付 録 遺伝子進化学の基礎知識

やっぱりブロックされていたこのブログ

科学紀元9年11月6日(金)

先月、9月に続いてまた上海に行きました。チェックしたところ、私自身のこのブログを含めて、Goolgeブログはすべて見ることができませんでした。日本で他の会社が運営しているいくつかのブログは問題なく上海でも見ることができたので、明からにグーグルだけがブロックされていることになります。そろそろ、このブログ全体を別のところに移動することを考えたいと思います。