Sayer Says in Japanese

Sunday, November 20, 2011

瑛九三昧

11年11月20日(日)

 今年は、画家瑛九の生誕100周年です。いくつかの展示会を見て来ました。
うらわ美術館と埼玉県立近代美術館で開催されていた瑛九生誕100周年記念回顧展を見ました。福井県を訪れた瑛九と一緒に写っていた人々の中に、若き父親、故原子光生を見つけました。埼玉県立近代美術館の、点描画で埋め尽くされた空間は圧倒的でした。パリのオルセー美術館にも点描の部屋がありますが、いろいろな作家の作品でごちゃごちゃしているし、なんといっても瑛九さんの点描はすばらしい迫力です。「つばさ」を含めて、本物の作品に出会ったのはこれが三回目です。1回目は1979年に東京新宿の小田急百貨店で開催された回顧展。父に連れて行ってもらいました。2回目は2000年ころだったか、宮崎市でゲノム関係の会議があった時に、宮崎県立美術館を訪れました。そして今回。瑛九さんの点描にかけた思い、死んでいった無念を思うと、涙がこみあげてきました。
 いつまでも、いつまでも、あの点描画で囲まれた空間にいたかったです。ひとつだけ、無題の作品がありました。いままでは「つばさ」がもっとも好きでしたが、象(しょう)のないこの無題の作品が好きになりました。
 この展示会を見てからしばらくして、福井に帰省しました。大野で開催されていた瑛九と彼に関連した画家の作品展を、友人の尾野和之さんご夫妻に連れて行ってもらって見学しました。その時に、会場に来ておられた方が話されていたのをふと耳にして、ご自身の持っておられる瑛九さんやあいおうさんらの作品を出品されていた堀先生が亡くなられたことを知りました。子供の時に何度かお会いしたことがありました。
 翌日、今度は鯖江市のまなべの館で開催されていた、故木水育男先生が収集された瑛九さんのエッチングやリトグラフの展示を尾野さんと見にゆきました。この日は埼玉県立近代美術館の学芸員の方が講演されました。二時間にわたって瑛九さんの作品を時代順に解説され、とても参考になりました。瑛九さんのエッチングとリトグラフは、どちらのジャンルもすばらしい作品ばかりですが、個人的にはエッチングの濃度の濃さに圧倒されました。
 瑛九さんの最後の作品は、点描画ではなく、不思議な詩です。文字ごとに色を変えた、不思議なものです。内容も、クマンバチが刺すという表現は、あるいは彼自身の体の痛みを表していたのでしょうか。こどもの時の情景が、死を前にしてあるいはよみがえってきたのでしょうか。いずれにせよ、巨大で深遠な精神世界を持っていた人だったと思います。

斎藤成也

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