Sayer Says in Japanese

Wednesday, December 28, 2011

生物学の論文における生物種名

2011/12/29

今年は11月中旬から12月中旬まで、共同研究者, Blancher教授のいるフランスのトゥールーズに滞在していました。いろいろな話をしましたが、そのひとつが、生物学の論文における生物種名です。前から気になっていたのですが、モデル生物を使った研究では、時折その生物名を書かない論文を目にすることがあります。最近は減ったのかもしれませんが、十数年前、あきらかにパン酵母 (Saccharomyces cerevisiae)を用いた研究でありながら、この種名が論文内のどこにも出てこない論文にいくつかお目にかかったことがあります。おそらく、この生物を研究している人々にとっては、遺伝子名を見ればパン酵母であることは明らかなのでしょう。しかし、これはやはり問題だと思います。
 同じように、ハツカネズミ(Mus musculus)、最近は日本語でもマウスということが多くなりましたが、これも代表的なモデル生物なので、全世界に多数の研究者がいるためか、パン酵母と同じように、論文のどこを探しても学名はおろかmouseとすら書いていない場合があります。それをBlancher教授に伝えたら、彼も同じ経験があるよと言ってくれました。こちらも、遺伝子名が少しヒト (Homo sapiens)の場合と異なるので、マウスの専門家ならわざわざ書くことをしないのでしょう。しかしこれもまた傲慢というものです。モデル生物ばかり研究している研究者は、どうも生物の多様性をおろそかにする傾向があります。生物学の論文ならば、研究にはどの生物を用いたのか、きちんと書くべきです。

斎藤成也

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