Sayer Says in Japanese

Wednesday, June 11, 2008

遺伝学電子博物館

科学紀元8年6月11日

今度は、お仕事関係。
私が勤務している国立遺伝学研究所では、10年ほど前に「遺伝学電子博物館」を立ち上げました。数年前から、この担当をしている遺伝学博物館委員会の委員長にさせられて、このたびようやく大幅リニューアルとなりました。

リンク先は、 遺伝学電子博物館 です。

トップページのあちこちに登場する人物画は、本研究所でこの電子博物館を担当している方が描いたものです。ほのぼのとした筆致で、僕はとても気に入っています。
 「遺伝学の殿堂」は、現在50名がリストされています。本当は研究者の写真を掲載したいのですが、ウェブページの著作権があるので、写真があるページへのリンクだけにとどめてあります。今年度中にさらに50名追加して、100名にしたいと思っています。私が分子進化の研究をしているので、ややその分野に偏った選び方になっているかもしれません。たとえば、若くして亡くなった Allan Wilsonが50名の中に入っています。とりあえず最初の100名までは、死去した人だけを選ぶ予定です。
 ゲノムアニメ劇場では、今回、昨年ノーベル賞を受賞したカペッキとスミーシーズの業績を紹介しています。後者のOliver Smithiesさんの講演を、25年ほど前に、米国留学中にヒューストンで聞いたことがあります。すでに、今回受賞の対象となった相同的組換えによる遺伝子治療の基礎研究をはじめていました。おおばくちだから、学生やポスドクに頼むのは悪い、と言っていましたが、大当たりの可能性があるからこそ、自分で手がけたのかも。彼は、私が留学していたテキサス大学ヒューストン校の招待できたのですが、なんと僕たち大学院生のしている研究成果の発表も聞いてくれました。僕はインフルエンザウイルス配列の進化について解析していたので、その話をしたら、なんと彼が質問してくれたのです。質問の内容は今では忘れてしまいましたが、日本の大学院修士課程の時に、毎日のように行なっていたでんぷんゲル電気泳動の発明者に質問してもらって、とても光栄だったことをおぼえています。この発明だけでも、スミーシーズ博士はノーベル賞クラスの値打ちがあると思います。

斎藤成也

三島由紀夫『恋の都』(ちくま文庫)

科学紀元8年6月11日

バルセロナにいっている間になにか読もうと、2冊買ったうちの1冊がこの本です。三島由紀夫の作品は、若いころに新潮文庫シリーズをはじめとしてかなり読んだけれど、この作品は、1950年代前半に雑誌「主婦の友」に連載されたものだということで、以前は文庫版化が許されなかったのかもしれません。
 バルセロナでは毎晩飲んでいて、本書を読み進むことができなかったので、今夜帰宅してから、ワインを少し飲みつつ、一気に読了しました。すばらしい作品でした。もちろん僕が三島由紀夫ファンであるからかもしれませんが、女性雑誌むけにさらっとこんなに軽くしかも、ひょっとすると彼の本心をちらりと出しているような作品をかけたとは、さすが三島。まあ当時二十代後半で、どんどん文章が浮かんできたのでしょうが。作品中に少なくとも2回「虚無」という単語が出現したのが、虚無主義者の僕にはうれしかったです。作品の結末も、僕が予想したとおりだし、解説の、女性のような名前だけれど、どうやら男性のような千野帽子という人の書いた内容も、なかなかよかったです。
 主婦の友社の、今ではかなり上のほうにおられるK子さん、いいですね、こんなすてきな作品があなたの会社の雑誌に50年以上前に掲載されていたこと。また、この文庫本の発行日も、ごく少数の人間しか今となっては知らなくなってしまった、ある女性の誕生日であることも、よい偶然でした。前回のこのブログでURLを公開した新しい多重整列システム MISHIMAが、敬愛する三島由紀夫へのオマージュであることは、当然ですが、僕が今日三島由紀夫のこの作品を読み終えたことは、それに花を添えてくれました。

Tuesday, June 10, 2008

MISHIMA multiple alignment server

科学紀元8年6月11日(水)

 昨夜バルセロナから帰国しました。SMBE最終日のセッションで私の研究室のポストドク,Dr. Kirill Kryukovが紹介した塩基配列の多重整列システム MISHIMAの説明pageは以下のとおりです(クリックしてください)。

MISHIMA server

まだプロトタイプであり,たがいにとても近い配列でないと,なかなかうまく動きませんが,たとえばヒトのミトコンドリアDNA完全配列(長さ16500塩基前後)を100本ほど整列するのを,1時間ほどで終えてしまいます。

Sunday, June 08, 2008

SMBE in Barcelona

科学紀元8年6月8日

6月6日から始まって今日まで,スペインのバルセロナで開催されている分子進化学の国際会議に参加しています。昨年カナダのHalifaxで開催されたこの会議(SMBE)には私の研究室から4名が参加しましたが,今回は大学院生3名を含む6名が参加しています。今,もうすぐ3時から始まるBioinformaticsのセッション会場にいます。ポストドクのKirill Kryukovさんが発表します。新しいアルゴリズムに基づく多重整列システムMISHIMAを開発しています。核となるアルゴリズムの開発とプログラミングは彼が行っていますが,システムの名前と,いくつかの改良のアイデアは私が出しています。MISHIMAはもちろん国立遺伝学研究所のあるまち,三島から来ていますが,外国では三島由紀夫のほうが有名かも。Method for Inferring Sequence HIstory through Multiple Alignmentの略ということにしてあります。 MISHIMAサーバーは近日公開します。

斎藤成也
国立遺伝学研究所