Sayer Says in Japanese

Wednesday, June 11, 2008

三島由紀夫『恋の都』(ちくま文庫)

科学紀元8年6月11日

バルセロナにいっている間になにか読もうと、2冊買ったうちの1冊がこの本です。三島由紀夫の作品は、若いころに新潮文庫シリーズをはじめとしてかなり読んだけれど、この作品は、1950年代前半に雑誌「主婦の友」に連載されたものだということで、以前は文庫版化が許されなかったのかもしれません。
 バルセロナでは毎晩飲んでいて、本書を読み進むことができなかったので、今夜帰宅してから、ワインを少し飲みつつ、一気に読了しました。すばらしい作品でした。もちろん僕が三島由紀夫ファンであるからかもしれませんが、女性雑誌むけにさらっとこんなに軽くしかも、ひょっとすると彼の本心をちらりと出しているような作品をかけたとは、さすが三島。まあ当時二十代後半で、どんどん文章が浮かんできたのでしょうが。作品中に少なくとも2回「虚無」という単語が出現したのが、虚無主義者の僕にはうれしかったです。作品の結末も、僕が予想したとおりだし、解説の、女性のような名前だけれど、どうやら男性のような千野帽子という人の書いた内容も、なかなかよかったです。
 主婦の友社の、今ではかなり上のほうにおられるK子さん、いいですね、こんなすてきな作品があなたの会社の雑誌に50年以上前に掲載されていたこと。また、この文庫本の発行日も、ごく少数の人間しか今となっては知らなくなってしまった、ある女性の誕生日であることも、よい偶然でした。前回のこのブログでURLを公開した新しい多重整列システム MISHIMAが、敬愛する三島由紀夫へのオマージュであることは、当然ですが、僕が今日三島由紀夫のこの作品を読み終えたことは、それに花を添えてくれました。

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