Sayer Says in Japanese

Saturday, September 06, 2008

進化学会で招聘したStefan Grunewald氏とのDiscussion

科学紀元8年9月7日(日)

自宅から発信、第3信です。
 遺伝学会の2週間ほど前に、東京大学の駒場キャンパスにて、日本進化学会が開催されました。私は、系統ネットワークに関するシンポジウムを企画し、東京工業大学の下平氏、茨城大学の北野氏、そして上海にあるマックスプランク財団と中国科学院共同運営のComputational Biology InstituteのStefan Grunewald氏に話していただきました。
 Stefanには学会のあと三島の遺伝研に来てもらい、系統ネットワークについて少し議論することができました。議論といっても、もっぱら私がいろいろ教えてもらったのですが。そのなかで、めずらしく私のほうが主張したことに、ネットワークの枝の長さとしては、整数値しか認めるべきではない、というものがあります。
 距離行列から系統ネットワークを作る場合、整数でないことが一般的ですが、塩基配列やアミノ酸配列の多重整列結果から距離行列を定義した場合に限り、そこから生みだされる系統ネットワークは整数値の枝長をとるべきだというのが、私の考え方です。たとえば、ある塩基サイトに4種類の塩基(A, C, G, T)が共存していると、それに対応する系統ネットワークは、正三角形4個を組み合わせた正四面体となり、4個の塩基が4個の頂点に位置します。この状態を距離行列で表わすと、

__A_C_G_T
A_0_1_1_1
C_1_0_1_1
G_1_1_0_1
T_1_1_1_0

となります。この距離行列からは、Stefanによれば、2種類の異なる系統ネットワークが生みだされます。ひとつは、中心から4方向に枝が伸びる系統樹です。もうひとつは立方体です。8個の頂点のうち、ひとつおきの頂点に4個の塩基が位置します。図は省略します。しかし、どちらの場合にも、枝の長さはすべて0.5です。節間の距離がすべて1.0なのですから、そうなります。また、Stefanによれば、正四面体は彼らが考えるSplit Graphではないとのこと。複数の節を分断する(split)のが前提だからです。でも私にとっては、枝の長さが整数値にならないネットワークは許せないので、議論になりました。もちろん、異なる前提から出発しているので、議論は平行でしたが。

斎藤成也

0 Comments:

Post a Comment

<< Home